『北愁記』

『北愁記』


阿久悠さんが書いた文章を、大滝秀治さんが読む。

 

 カモメとウミネコの違いは、尻尾に黒い筋があるとか、無いとか。
 しかし女は、心丈夫な時に見たらウミネコで、心儚い時に見たらカモメだと、そんな風に言います。
 女にとって、ウミネコの群れる日と、カモメの飛ぶ日と、いったいどちらが多いのだろうと、私は考えてしまいます。
 
  千切れ雲に追われ追われて飛ぶカモメ

 

この後、迫りくる前奏があって、八代亜紀さんが「かもめの歌」を歌う。

 

 注ぐ人と呑む人と だんまりで向かい合い
 ……
 スイスイ~

 

この一連が好きだった。
文字に起こしてみたけれど、漢字と句読点の使い方は違うと思う。


全然記憶に残っていなかったのだけれど、「頬づえついてブルースを」が良いなぁ。
マリーが出てくる。

五番街のマリー」の男の、上から目線。
「頬杖ついてブルースを」の女の、同志感。

……そういえば「ジョニーへの伝言」は、マリー感がある。
マリーは、踊り子?

「頬づえついてブルースを」の前に語られる俳句は、生前のマリーっぽい。

 どこでもいいから暖めたいと熱燗を飲み

歌の後の語りは、マリーの死を汲んでいるような。
しがみついていた手を離して、流されていく。

 

龍田大社と兎我野町

2023年11月19日(日)
龍田大社と兎我野町

龍田大社は、七五三のお参りに来ている家族連れが何組もいた。
幸せな景色。

龍神社の所は、とても気持ち良かった。
空気がしっとりとして、澄んでいて、美味しかった。

風の吹く日に来たら、後ろの樹木が揺れて、風の神社の雰囲気を感じられたかも。

 

三郷町の散歩コースを歩こうか、三笠山に行ってみようかと思っていたけれど、兎我野町が気にかかった。

兎我野町は、もともと寺町だったのかな。
古いアパートと寂れた小さな商店街があるイメージだったけど、違った。
ホテルが多い。
年季の入っているのはラブホテルで、新しいのはビジネスホテル。
そんな感じがした。
「兎我野町」のお母さんは、この町で働いていた。

大阪市には、封鎖された公園と、封鎖されていない公園の2種類がある。

 

『横断する日 ポエトリーセッション』

2023年11月18日(土)
西成 難波屋
『横断する日 ポエトリーセッション』

 

2部の、今野和代さんの詩の朗読、「兎我野町」。
その前が演奏+朗読だったか、演奏だけだったか覚えていないけど、「兎我野町」に切れ目なく続いていった。
繋いだのが、「summertime」。
演奏と。ギターのSNAKE秀島さんが小さな声で「summertime」を口ずさむ中、朗読が始まった。
…という記憶。
すごくいい感じだった。
1部で、やっぱり詩は分からないと思っていた。
でも、「兎我野町」は、ふっと、いくつかの言葉がキャッチできた。
「兎我野町」の中で、さっきまでの「summertime」が、常吉さんの「サマータイム」に繋がった。
原曲の歌詞は知らない。
常吉さんの「サマータイム」は、お父さんとお母さんが出てくる。
「兎我野町」に出てくるのは、シングルマザー。
子を守る親と、放棄し虐待するしかできない親。


デカルコ・マリイさんの存在感、素敵だった。
ダンスで表現するという感じは受けなかった。
そういう存在が、そういう風にそこで生きているみたいな。
妖怪とか精霊みたい。


中島直樹さんのコントラバスを体験できる!と、この日に芹沢芦雪展に行くことに決めた。
でも、道に迷った焦りを引き摺ったままで、新しい難波屋さんは初めてで勝手が分からず、人も沢山いて、緊張が解けなくて、浸れなかった。
それでも、法竹(ほっちく)の音とゴントラバスの音の組み合わせは、心地よかったな。
再挑戦しよう。


道を教えてくれたタコ焼き屋さん、ありがとうございます。

 

中之島美術館~寺田町

2023年11月18日(土)

中之島美術館~寺田町

『青年の環』の最初のシーンは、中央公会堂だと思っていた。
でも、違う。
眼下に堂島川が流れていて、向かいに中央電信局がある場所。
中央電信局は、堂島3丁目のNTTの所にあった。
ということは、中之島美術館の隣り、中之島3丁目かな。
そこに、舞踏研究所が公演会を催すような、ホールがあったのか。
そこから、山花正行は、生駒山の航空灯台の灯を見る。
それはどっちの方角なのだろう。

淀屋橋を渡る時、山が望めた。
生駒山だろうか???

橋のたもとに、「かき広」という屋形船を思わせる飲み屋があった。
「かき広」の「かき」は、「牡蠣」だろう。
『大阪の宿』の宿は、土佐堀川に面していた。
土佐堀川の牡蠣船で、お酒を飲むシーンがあった。
その牡蠣船の名残だろうか。

ホテルのある寺田町まで歩いてみた。
御堂筋で銀杏の匂いを嗅いで、左折したり、直進したり。
船場センタービルを少し歩いて、抜けて少し行くと、小さな商店街があった。
「井」の字が付いていたような。
やがて、新宿感のあるところ。
ホストのお店が沢山ある場所があって、やがてごった返しの道頓堀。
そこをさっさと抜けて大きい通りを渡ると、簡体字の看板が目に付く通り。
また広い通りに出ると、右斜め前に、生国魂神社が見えた。
歩き続けて、四天王寺の脇を通って、天王寺駅を目指した。
途中どうしてもお手洗いを使用したく、カフェへ。
休んだら、もう歩くのが嫌になったので、一駅電車に乗って寺田町へ。
よく見ると、ホテルの住所が、「大道」で笑った。

『青年の環』の大道家は、阿倍野駅からバスで20分の所に住んでいる。
どこだろう?
そこに引っ越す前は、諏訪ノ森に住んでいた。

 

『長沢芦雪 展』

2023年11月18日(土)
長沢芦雪 展』
大阪中之島美術館

「酔李白・山水・瀧図」
真ん中の幅が、酔った李白と、それを介抱する童子
向かって左の幅が、瀧。
右が、山水。
瀧と山水は、酔っぱらって、いつしか寝入ってしまった李白の魂が遊ぶところ?
芦雪というと、龍と虎が有名だと思うけれど、子供が好き。
だから、「唐子琴棋書画図」の展示がなかったのが、ちょっと残念。
これは、個人蔵。

「龍図襖絵」
向かって右側の龍は、目覚めて、寝床から出ようとしている感じ。
龍の寝床は、きっと、河や湖の深いところ。
左側の龍は、空で遊んでいる感じ。
一気に描き上げた躍動感。
そして、自由。
これは、島根県松江市大野にある西光寺所有。
こちらは、また見られる機会があるかもしれない。

展示を見終わると、グッズ販売コーナーがあった。
そこに、阪神優勝長沢芦雪生誕270年記念コラボグッズがあった。
阪神タイガースの虎と、芦雪の虎の顔が並んでいる。
むりくり感が否めない。

 

 

 

『青年の環』1・2巻

『青年の環』1・2巻
野間宏

結末近くで大道出泉がお酒を飲んだのは、どこだろうか。
突然思い出して、気になった。

奈良で奈良漬けで飲んで、大阪に戻って海鼠腸で飲んで、そして最後のシーンへ。

あれは、奈良のどこだったのか、大阪のどこだったのか。
奈良は、旧家の広い座敷だった。
大阪は、二階の狭い一室だった。

記憶は、間違っていた。
大阪で海鼠腸で飲むシーンは、2巻にあった。
立売堀にある一軒家の、二階でのこと。
涸れかけた川を渡っていく。
西横堀川だろうか。

そして、もう一つの記憶違い。
芙美子は生駒に住んでいると思っていた。
そうではなくて、生駒山のふもと、東花園駅瓢箪山駅付近だった。
矢花正行が、生駒山の航空灯台の灯りを見て、芙美子を思い出すシーンが2回ある。
それが印象に残って、芙美子と生駒が結びついたのだろう。

航空灯台は、昭和7年~8年にかけて整備された。
有視飛行時代、東京~福岡の夜間定期航空のために、各地に設置された。
夜間定期航空は、人ではなくて、郵便物等を運搬していた。
昭和12年、戦争のために燃料と乗員の確保が困難になり、夜間定期航空は中止された。
でも、夜間飛行はゼロにならなかったらしく、航空灯台は点灯され続けた。
昭和18年、防空上、点灯は中止される。

戦後は、天文博物館になった。
博物館は、平成11(1999)年に閉館。
建物は、平成28(2016)年に解体された。

『青年の環』は、昭和14年7~9月の話し。

夜間定期航空は既に中止にされていたけれど、灯台は、まだ光を放っていた。
矢花正行にとっての、芙美子という存在。

大道出泉の「光」のイメージは、全く違う。
……遺産、遺産、遺産という言葉が、彼のうちに夜空に明滅する電球のようにはっきり現れ、それはやがて、昼間も掛け忘れてねぼけたように点っては消える点滅装置の電球のように、力のないうす汚れたものになって行った。

それにしても、大道出泉は、どうしてそこまで両親を軽蔑するのか。
色々あるにしても、そこまではと思ってしまう。
それに、出泉自身も、誠実に生きているとも思えない。

昭和14年4月に、出泉の父親敬一が支社長を務める、日本発送電㈱が設立される。
設立の最大の理由は、国家総力戦体制を支えるため。

この国家総力戦に対する嫌悪が強いからだろうか。

親父は一年後にはもう意見を変えていて、国家管理も民有国営ならば許せる、あくまで民有をまもり国営をその上にすすめるのであれば、やはり考えなければならんと言い出したのだ。そう、そしてそれは別に親父の意見でも何でもなく、電力界が軍部と官僚におされて最後にとりあげた意見にすぎないのだ。

この感情は、かつての親友、矢花正行に対しても抱かれている。
戦争への嫌悪、軍人への嫌悪、帝国主義への嫌悪。
かつては、同じ感覚を抱いていた。
矢花がその感覚を失ったわけではない。
でも、流されていく以外の道は無い。
出泉の自殺願望は、流されていくことへの拒絶だろうか。
性病のせいで徴兵から免れるのでは、駄目なのだろうな。

大道出泉は、相手に不快感を与えたい時に、こてこての(?)大阪弁を使う。
その大阪弁は字面でしか分からないけれど、とてもいやらしい。

 

 

AZUMI、バラッドショット、ナカヒラミキヒト

2023年10月15日(日)
入谷 なってるハウス
AZUMI、バラッドショット、ナカヒラミキヒト

「後はゆっくり眠るだけ」、「old town」。
先日のバレルで、秋を感じた歌の中に入っていた。
でも今日は、秋の澄んだ空気は、全然感じなかった。

「夜が短い」、「same old song」。
秋が深まった感じ。

バラズミ、楽しい。
岩井さんと阿部さんは、立ち姿がロッカー。
でもAZUMIさんは、バタヤン。
3月に大阪でバラズミをやる。
行きたい…。

ナカハラミキヒトさん、初めまして。
「クラゲの唄(?)」、いい感じ。

そして、「思ひで」。


何度も見ている絵が気になった。

男が懐に入れている手は、ピストルを握っているのではないかと、不図思った。
そうしたら、女がテーブルの下に隠した手も、ピストルを握っているように思えてきた。

2人の視線の先には、暗殺の対象者がいる。

男がウィスキーのボトルをテーブルに置いた時、女が対象者を撃ち、男はピストルを構え、退路を確保する。

男と女が、同じ体勢なのは、緊張感を表すため。

…なんだか、そんな絵に見えてきた。

テーブルの、女の前にある黒い四角いものは何だろう。