『ルポ 歌舞伎町』

『ルポ 歌舞伎町』
國友公司
彩図社 2023年

「東横キッズ」のいる場所って、渋谷だと思っていた。

「東横」と言えば、思い浮かぶのは「東横線」、「東急百貨店東横店」、「東横のれん街」だし。
…無くなっちゃったのもあるけれど。

それに、新宿に、「キッズ」のイメージがなかった。
「キッズ」という言葉に、漠然と渋谷を思い浮かべていた。


新宿歌舞伎町と地雷系ファッションの組み合わせにも、違和感。

地雷系ファッション、マイメロ、MCMのリュック…。
どれも知らないもので、ネットで検索した。

地雷系ファッションの女性は秋葉原にいそうな感じ。
新宿歌舞伎町っぽくない。
そして、風俗嬢のファッションっぽくもないような。


もうひとつイメージと違っていたのが、ホストクラブの客層。
イメージしていた客層は、実際には一割に満たない方の客層だった。


第五章に出てくるチャーリーの、女の子達への接し方が印象的だった。

説教一つせずに、彼女たちを肯定する。

執拗な付きまとい野郎からは守る。
でも、彼女たちに、「歌舞伎町」から出た方が良いとは言わない。

彼女たちの居場所だから?


本の最後に、これから、歌舞伎町における中国人社会を調べたいとあった。
あの扉は開けられるのか。

アフリカから来ている人々の「社会」は、形成されていない。
こちらは、調べても、どこまでもとらえどころが無いような。


あの扉に話が及んだ時の、人々の反応。
ナイジェリア人の、「生きることはサバイバル」という言葉。
人々は口を閉ざす。
ナイジェリア人には、語らないことが沢山ありそう。
怖い。


それにしても、歌舞伎町のあの辺りが再開発されることって、あるのだろうか。

 

 

『炎の爪痕』

『炎の爪痕』
アン・クリーヴス
玉木亨 訳
創元推理文庫

家庭内で暴力にさらされた子供。
子供に無関心な親に育てられた子供は、自分で、自分と兄弟を守らねばならない。
自己愛の強い母親の面倒を、捨てきることができない子供。

そういった子供たちが出てくる。

キャシーはこれから、どんな子供時代、思春期を過ごすことになるのか。
それが、ちょっと不安な終わりだった。

最後のシーン。
キャシーの居場所がどこにも無いのが、印象的だった。

これまでは、ペレスが家を留守にする時は、キャシーがどこに預けられるか記述があった。
それが無かった。

さらに、血縁上の父親は、一人で他国へ行こうとしていることが明らかになる。

まずは、ペレスとウィローで盤石の家庭の基を築いて、キャシーも育てていくのだ。
…そうは、思うものの。

もし、キャシーが、この島と家を離れたくないと言ったら?
もし、キャシーが、あの島の家へ帰りたいと言ったら?
もし、キャシーが、フランが恋しいと言ったら?

そう言ったら、キャシーは厄介者になってしまうのだろうか。

ウィローから、嫉妬心が消えるのかもしれない。
そして、幼い子供を遺して亡くなったフランの無念や悲しさを感じていく。
ペレスは、余裕を持って、家族を守り愛していけるようになる。

でも。
でも、キャシーは、そこに居場所を見つけることができないかもしれない。

作者は、キャシーの今後をどう考えたのだろう。

そして、罪の意識というものは、乗り越え、捨て去らねばならないものなのだろうか。
そうしない限り、幸せにはなれないのだろうか。
罪を抱えて、反芻して生きていくのは、愚かなのだろうか。

シリーズの最終話で、悶々。

 

 

AZUMI

2023年4月13日(木)
北浦和 ちどり
AZUMI

なんでか、とても大阪を感じた。
「dirty old town」に、頭の中で、「夢見るベランダ」がくっついていった。

とても「大阪」を感じたのだけれど、その「大阪」が何なのか、分からない。

不思議な、面白い感覚だった。


いつか、ライブで、「春一番」も聴きたいな。


「クークーバード」の閉店前のライブに行ったのが、ついこの間のようだ。

「ちどり」は閉店するけれど、この「場」は、引き継がれるそう。
良かった。

 

 

AZUMI、横山知輝

2023年4月5日(水)
浅草 BARデンキュー
AZUMI、横山知輝

 

舞台の蹴込みにグルッとLEDライトが点いた時、「スポットライトと水たまり」を聴きたいと思った。
AZUMIさん、歌った。

嬉しい。

先日、夜久さんが「父のワルツ」を歌った。
一昨日、AZUMIさんも歌った。
優作さんも歌っている。
横山さんのが、一番好きかも。

 

AZUMI

023年4月3日(月)
池袋 バレルハウス
AZUMI

最後、「魔法のドラゴン」。
西村ツチカさんの絵が思い浮かんだ。
西村さんが「魔法のドラゴン」を絵にしたら、どんな感じだろう。
どんなドラゴンだろう。
ラストの解釈は、どんな?

「何も考えない」。
アコギの空気の圧が、快感。

 

 

『葬送の庭』

『葬送の庭』
タナ・フレンチ
安藤由紀子 訳
集英社文庫

父親は、誰がやったのか分かったのだろう。
だから、フランクに、今すぐに家を出て二度と来るなと言った。
母親を、これ以上悲しませないため。

でも本心は、自分の介護をする人がいなくなるからであるような。

13歳のフランクに、父親は言う。
男というものは、自分は何のために死ぬのかが分かっていなければならないと。

13歳のフランクは、すでに、自分の父親がどうしようもない男であることに気づいていたのではないだろうか。
口だけの男だと、心の中で馬鹿にしていたかもしれない。
でも、父親のその言葉だけは、40歳を過ぎても心に残っていた。

22年ぶりに再会した兄弟姉妹達に、フランクは「なんのためになら死ねるか」と尋ねる。
シェイは、なんと、「家族」と答える。

父親が働いていたら、お酒に溺れなければ、事件は起きなかった。

そう思うのだけれど、父親は責任を回避する。
「おまえたちはもう大人だ。万が一、自分の人生を台なしにしたところで自己責任だ。おれの責任じゃない」

シャルロッテ・リンクの『失踪者』のエレインや、この『葬送の庭』のシェイは、どうしたらよかったんだろう。

 

 

良元優作、夜久一

2023年3月23日(木)
新宿2丁目 ラバンテリア
良元優作、夜久一

二人で常吉さんの曲…、「疫病の神」だったかな。
から始まった。

前半は夜久さんで、2曲目に「約束」を歌った。
終わった時、隣で聴いていた優作さんが、「ある人のことを思い出した」と言った。
「しょうもない友人がいて」みたいなことを話しながら、ギターを構えた。
「風の噂」。

この流れ、素敵だった。
一つの歌が色んな所に繋がっていく。

「放浪者の唄」からの「火を運ぶ人」。
先日、KIDBOXでも聴いた。
いい感じ。

優作さんのハングルの、船乗りの歌。
波がうねり、上下する感覚。

春の歌。

「緑のタイルのいかしたテーブル」は、黒門市場の歌。

2人で、「moon river」、「水の中」、「鉛の兵隊」、「石」。
「石」の後の、夜久さんの一言がおかしかった。
「どうして、『石』って皆で奏るとバラバラになるんだろう」。

最後は、優作さんが「帰り道」。
ラバンテリアのライブの最後の一曲が、「帰り道」になるのかな。
これから「帰り道」を聴くと、この夜のことを思い出すのだろう。

「はいチーズ」の掛け声ではなくて、皆で「ラバンテリア」と叫んで写真を撮った。
ラバンテリアの最後の文字は、「ア」。
それは、五十音の最初の「あ」。

新たに始まりますように。