『鬼の詩・上方苦界草紙』
『鬼の詩・上方苦界草紙』
ファラオ企画 1991年
『創作』に出てきた沢山の本の中で、『鬼の詩』が気になった。
藤本義一さんの小説を読むのは初めて。
軽妙でシニカルな作品をイメージしていた。
違った。
『鬼の詩』は、実在した落語家をモデルにして、一人の芸人が芸を追求する話し。
「えげつない」という形容詞が、とても合う。
この落語家さんの芸に、興味を持てなかった。
『上方苦界草紙』は、伊勢の間の山の芸人、「お杉とお玉」のお話し。
『大菩薩峠』を読んで以来、間の山節の世界に惹かれていた。
『上方苦界草紙』の間の山の芸人世界には、全然惹かれない。
でも、実際は、こういう世界だったのかもしれない。
ただ、ラストは良かった。
三味線ひとつを抱いて、門付けの放浪の世界に入っていくお文は素敵だった。
「かめへんねん……」
かっこいい。
『生きいそぎの記』は、藤本義一さんが、川島雄三という映画監督と関わった時のことを書いたもの。
これは、好き。
二人のやりとりが、面白い。
川島雄三という方のことは、知らなかった。
青森は下北の生まれだけれど(だから、か?)、太宰治が大嫌い。
そして、織田作之助が大好き。
調べてみたら、織田作之助の『わが町』の監督をしている。
この作品は、大好き。
これは、ちょっと観てみたい。
『泣尼』という能面を、検索してみた。
泣き笑いの顔。
泣いているだけの表情ではないところが、辛い。