『崩れゆく絆』

『崩れゆく絆』

チアヌ・アチェ

訳・粟飯原文子

光文社古典新訳文庫

 

19世紀の末、ナイジェリアのイボ族の世界に、白人がやってくる。

 

この作品は、文化人類学の教材として読まれていた時もあったそう。

確かに、精霊信仰、一夫多妻制、法などは、未知の世界。

 

でも、登場人物達のことは、身近に感じられた。

 

主人公のオコンクウォのような男性は、珍しくはない。

父と息子の確執。

母と娘が過ごす時間の濃密さ。

イケメフナのように、社会や時代や集団のスケープゴートとなって奪われる命。

嘆きながら、でも何もせず、現状と折り合いをつけていく、オビエリカ的な生き方。

 

あるよね、いるよねと読み進めていった最後の一行。

ショックだった。

 

オコンクウォは、自死を選んだ。

最初に白人側に捕らえられた時に、屈辱を経験したからではないだろうか。

次に捕まったら、もっと酷い屈辱を与えられる。

そして、とても皮肉な結末になってしまった。