田山花袋 羽生もの

田山花袋 羽生ゆかりの小説

羽生市のホームページに紹介されていたので、読んでみた。

「Mの葬式」と「騎兵士官」は、全集に収録されていなかった。
『縁』は、読まなかった。

全部に、羽生市にある建福寺の住職、太田玉茗が出てくる。

『妻』(全集の1巻に収録)
『蒲団』の前段階の話し。
田山花袋の人間関係を把握できた。
花袋は、友人である太田玉茗の妹さんと結婚。
太田玉茗は、建福寺の住職になる。

「おし灸」(1巻に収録)
旅の灸師が、羽生にやってくる。
玉茗は、治療と宿泊のために、本堂を貸す。

「幼きもの」(2巻)
『蒲団』の女弟子が、花袋の恋敵の男性との間に授かった子を、玉茗が養女にする。

「雨風の夜」(5巻)
玉茗のもとに、祟りを絶ちたいと、100年前に亡くなった曾祖母の供養を依頼する男が訪ねてくる。
その夜、玉茗は、街の料亭に買われてきたばかりの、16歳の酌婦の埋葬を行う。

この作品、とても好き。

「籾がら」(6巻)
玉茗と奥さんと、何十年ぶりかの籾摺りをする。
何十年ぶりかで、籾殻を燃やす匂いを嗅ぐ。
養父であった先代の住職のお嬢さんとの初恋を思い出す。

「ボールドに書いた字」(6巻)
小学校の改装工事中、建福寺が、2年生と4年生の教室になった。
休みの日、東京から遊びに来ていた玉茗の友人が、黒板に、「Wine, Women and Song」と書く。

『春潮』(14巻)
一人の女性を巡る、二人の男性。
女性は、秘めていたけれどずっと好きだった方の男性に告白して、振られる。
そして、好きになれない方の男性と結婚する。
数年後、その男性二人が、建福寺で邂逅する。

『白い鳥』(17巻)
赤ん坊を連れて、男から逃げてきた姪を、玉茗は寺に預かる。
そして、里親を探す。

『小さな廃墟』(22巻)
花袋と玉茗が、廃駅になった後の川俣駅周辺を歩くシーンがある。


玉茗って、とてもいい人。

花袋のもう一人の友人、柳田国男は、『蒲団』を受け入れられなくて、離れていった。
玉茗は、自分の妹の旦那の告白『蒲団』をどう受け入れたんだろうか。
『縁』を読むと分かるのか…。

『妻』を読むと、柳田国男は、悲恋(?)を経験したことが分かる。
「春潮」と「白い鳥」には、柳田国男的な人物が出てくる。
柳田国男が失った愛は、実際はどういうものだったのだろう。