『裏切り』

『裏切り』
シャルロッテ・リンク
浅井晶子 訳
創元推理文庫

主人公の女刑事ケイトは、『失踪者』のエレイン的な部分がある。

女性として、魅力的では無い。
人間としても、魅力が無い。
自分に自信が無い。

でも、ケイトの「ふいに悟った」のところを読んで、2人の違いを知った。

ケイトは、自分に積極的に接してくれる男性に、惹かれるようになった。
彼を何度か拒絶した後、頑張って、自分から接触した。
その時、彼は自分を恋愛対象として接しているのではないと、直観で悟った。

エレインは違う。

『失踪者』の、終わり近くにある、その違いが分かる部分を読み返してみた。
ここのエレインの描写は、辛い。

エレインは、藁をもつかむ気持ちだったのだろう。

親切心から手を差し伸べた男性に対し、私たちの出会いは運命なのだ。
…そういう高揚感を一方的に感じ、接した。

そして、彼の孤独と絶望に、無神経に触れることとなった。

ケイトと、ケイトが惹かれた男性も、逆撫でし合った。
でも、同じ空間で時を過ごし、分かち合え、支え合える関係性を築くことができた。
的確に、対等に、互いを判断できたのだろう。

「直観」と「直感」の違いかな。

それにしても、エレイン、辛い。