『炎の爪痕』
『炎の爪痕』
アン・クリーヴス
玉木亨 訳
創元推理文庫
家庭内で暴力にさらされた子供。
子供に無関心な親に育てられた子供は、自分で、自分と兄弟を守らねばならない。
自己愛の強い母親の面倒を、捨てきることができない子供。
そういった子供たちが出てくる。
キャシーはこれから、どんな子供時代、思春期を過ごすことになるのか。
それが、ちょっと不安な終わりだった。
最後のシーン。
キャシーの居場所がどこにも無いのが、印象的だった。
これまでは、ペレスが家を留守にする時は、キャシーがどこに預けられるか記述があった。
それが無かった。
さらに、血縁上の父親は、一人で他国へ行こうとしていることが明らかになる。
まずは、ペレスとウィローで盤石の家庭の基を築いて、キャシーも育てていくのだ。
…そうは、思うものの。
もし、キャシーが、この島と家を離れたくないと言ったら?
もし、キャシーが、あの島の家へ帰りたいと言ったら?
もし、キャシーが、フランが恋しいと言ったら?
そう言ったら、キャシーは厄介者になってしまうのだろうか。
ウィローから、嫉妬心が消えるのかもしれない。
そして、幼い子供を遺して亡くなったフランの無念や悲しさを感じていく。
ペレスは、余裕を持って、家族を守り愛していけるようになる。
でも。
でも、キャシーは、そこに居場所を見つけることができないかもしれない。
作者は、キャシーの今後をどう考えたのだろう。
そして、罪の意識というものは、乗り越え、捨て去らねばならないものなのだろうか。
そうしない限り、幸せにはなれないのだろうか。
罪を抱えて、反芻して生きていくのは、愚かなのだろうか。
シリーズの最終話で、悶々。