『北愁記』

『北愁記』


阿久悠さんが書いた文章を、大滝秀治さんが読む。

 

 カモメとウミネコの違いは、尻尾に黒い筋があるとか、無いとか。
 しかし女は、心丈夫な時に見たらウミネコで、心儚い時に見たらカモメだと、そんな風に言います。
 女にとって、ウミネコの群れる日と、カモメの飛ぶ日と、いったいどちらが多いのだろうと、私は考えてしまいます。
 
  千切れ雲に追われ追われて飛ぶカモメ

 

この後、迫りくる前奏があって、八代亜紀さんが「かもめの歌」を歌う。

 

 注ぐ人と呑む人と だんまりで向かい合い
 ……
 スイスイ~

 

この一連が好きだった。
文字に起こしてみたけれど、漢字と句読点の使い方は違うと思う。


全然記憶に残っていなかったのだけれど、「頬づえついてブルースを」が良いなぁ。
マリーが出てくる。

五番街のマリー」の男の、上から目線。
「頬杖ついてブルースを」の女の、同志感。

……そういえば「ジョニーへの伝言」は、マリー感がある。
マリーは、踊り子?

「頬づえついてブルースを」の前に語られる俳句は、生前のマリーっぽい。

 どこでもいいから暖めたいと熱燗を飲み

歌の後の語りは、マリーの死を汲んでいるような。
しがみついていた手を離して、流されていく。