『捜索者』

『捜索者』
タナ・フレンチ
北野寿美枝 訳
ハヤカワ文庫

死因が嘘だったら、カルは、道徳的規範に基づいた行動をしただろう。
穴に携帯を落とし、警察に通報し、行政に委ねる。
そして、アメリカへ帰る。

カルはトレイに、エチケット、マナー、道徳を教えようとした。
道徳的規範について考え、それに沿って行動することを教えようとした。

でもカル自身、アメリカで刑事だった時に、その虚しさを感じてもいた。
自分のそれは、妻のそれとずれていた。

もう刑事ではないから、刑事としての正しさに縛られることは無い。
娘の成長は、父親としての自信を取り戻させてくれた。
そして、娘の言葉に、新しい規範を見つけた。

カルはこれから、村の共同体に馴染んでいくのだろうか。
秘密の共有という繋がりはどうなっていくのか。

カルが移り住んだ、アイルランドの自然の描写が、素敵。
でも、登場する村人達はちょっと不気味。