『ガン・ストリート・ガール』
『ガン・ストリート・ガール』
エイドリアン・マッキンティ
訳・武藤陽生
早川文庫
今回の一曲は、43~44ページに出てきた、サム・クックのライブ盤より。
「It's all right / For sentimental reasons」のメドレー。
ダフィにとってサム・クックは、男の中の男。
むき出しの男らしさがあふれた、サム “ザ・マン” クック。
一方、北アイルランドのキャリックファーガス署犯罪捜査課の男たちは、悲惨。
パーク巡査部長は、ロシアンルーレット自殺。
ブレナン警部は、職を辞め、多分離婚し、アルコール中毒。
鑑識官マティは、未来を求めたけれど、IRAによる迫撃砲弾の犠牲になった。
警官は今やどちらの側からも日常的に攻撃を受けている。カソリック系南北統一主義過激派による暗殺未遂。プロテスタントによる殺害予告、走行車両からの銃撃。警官の家の窓に投げ込まれるレンガ。学校で子供たちが別の子供たちに言う。「おまえの父ちゃん、オマワリ!」
その他、色々。
そして、小説の終わり近く、492ページ。
警部補ダフィは、「ただの、疲れ、砕け、屈した男の残骸」になった。
「自分がなんのために生きているのかもうわからない」
「警察に入ったとき、自分は混乱を食い止められると思っていたけれど、混乱は日増しにひどくなっていくばかりだ」
そんなダフィだけれど、この後、ここから抜け出る道を選んだ。
前向きに、希望を持って。
そのことを、大天使ミカエルに感謝した。
ダフィのシリーズは、あと2作品続く。
この4作目で、ダフィは大きく変わった。
残り2つの作品も翻訳されるといいな。