『ガン・ストリート・ガール』

『ガン・ストリート・ガール』

エイドリアン・マッキンティ

訳・武藤陽生

早川文庫

 

今回の一曲は、43~44ページに出てきた、サム・クックのライブ盤より。

「It's all right / For sentimental reasons」のメドレー。

 

youtu.be

 

ダフィにとってサム・クックは、男の中の男。

むき出しの男らしさがあふれた、サム “ザ・マン” クック

 

一方、北アイルランドキャリックファーガス署犯罪捜査課の男たちは、悲惨。

 

パーク巡査部長は、ロシアンルーレット自殺。

ブレナン警部は、職を辞め、多分離婚し、アルコール中毒

鑑識官マティは、未来を求めたけれど、IRAによる迫撃砲弾の犠牲になった。

 

警官は今やどちらの側からも日常的に攻撃を受けている。カソリック系南北統一主義過激派による暗殺未遂。プロテスタントによる殺害予告、走行車両からの銃撃。警官の家の窓に投げ込まれるレンガ。学校で子供たちが別の子供たちに言う。「おまえの父ちゃん、オマワリ!」

 

その他、色々。

 

そして、小説の終わり近く、492ページ。

警部補ダフィは、「ただの、疲れ、砕け、屈した男の残骸」になった。

「自分がなんのために生きているのかもうわからない」

「警察に入ったとき、自分は混乱を食い止められると思っていたけれど、混乱は日増しにひどくなっていくばかりだ」

 

そんなダフィだけれど、この後、ここから抜け出る道を選んだ。

前向きに、希望を持って。

そのことを、大天使ミカエルに感謝した。

 

だけれど、ケルト神話の女神モリガンの方が、力があった。

 

ダフィのシリーズは、あと2作品続く。

この4作目で、ダフィは大きく変わった。

残り2つの作品も翻訳されるといいな。