『極夜行(きょくやこう)』
角幡唯介(かくはたゆうすけ)
文藝春秋 2018年
著者が極夜に興味を持った、『世界最悪の旅』というノンフィクション。
電池を使う懐中電灯が無かった時代の、極夜の旅。
その紹介箇所を読んでいて、思い出した。
夢の中で経験した、真っ暗闇の感覚。
思い返していたら、気付いた。
夜の街がだんだん暗くなっていった。
でもあれは、街の灯りが一つずつ消えていったのではない。
街の灯りが、だんだんと暗くなっていったのではない。
自分の目が、少しずつ明かりを失っていったのだ。
そしてそれは、視力の悪化ではなくて、心の問題。
真っ暗闇の中を、手探りで進んでいて、けつまずいた。
倒れて、手をついて、状態を起こした。
ぼんやりと、何かかが見えた。
あの時の安堵感。
作者は、月明りが照らし出した美しい世界に騙されて、大変な目に遭う。
でも、惹かれた。
月明りが照らす、昏い世界。
夢の中で、体験してみたい。