「フルダ・ヘルマンスドッティル警部 シリーズ」
ラグナル・ヨナソン
吉田薫 訳
小学館文庫
「アリ=ソウル シリーズ」の時系列な最後は、前向きな告白だった。
愛する人に、自分をさらけ出せない理由となっている出来事を伝えよう、という決心。
「フルダ シリーズ」では、秘密は、墓場(?)まで持っていくことになる。
全三作が完結した後、三冊目の著者のあとがきの後に、短い短編が添えられている。
老女が、犯した罪を、告白をする。
生き延びるためには、法を犯すしかなかった。
法を犯したことに後悔は無いが、過去は消えないし、罪の意識が芽生え増殖していく。
法の番人であり人間である警察官や検察官にとっての、法と正義、法と情状酌量。
人として許せない出来事。
老女が告白(懺悔)の相手に選んだのは、アリ=ソウル。
この短編を読んだ後、アイスランドの厳しい冬がイメージされた。
実際は、想像が及ばないくらい、厳しく暗い世界なのだろうけど。
ラグナル・ヨナソンの作品にも、アーナルデュル・インドリダソンの作品にも、そんな世界で、一人で、秘密を抱えて生きる人たちが出てくる。
「フルダ シリーズ」の時系列の最後は、一作目に描かれる。
その最後のことを、二作目、三作目で何度か思い出させられる。
絶望的に孤独。
三作目。
電気も止まる猛吹雪さなか、ポツンと一軒家への見ず知らずの訪問者は、怖かった。
くつがえされるのだけれど。
くつがえされて、また怖いのだけれど。
この作家の登場人物たちは、近しい存在同士であっても、愛し合っていても、隔たりがある。
『闇という名の娘』
『喪われた少女』
『閉じ込められた女』