『小説河内風土記 巻之三』
『小説河内風土記 巻之三』
巻之三は、色欲回。
『おんば』
流行り病で両親を亡くした、20歳と17歳の姉妹の話し。
二人は、結婚することなく、妊娠→出産→乳母を幾度か繰り返す。
子供たちは、一人を残して養子に出す。
不幸な話しなのだけれど…。
物語の最後、二人は、73歳と70歳になっている。
今東光は、「この河内女の幸福については何人も疑うものがなかった」と書いている。
周りの人たちが、この老姉妹をどう思っていたかは分からないけれど、確かに、二人は自分の人生に満足していた。
それは、二人とも、本当に好きな人と、短い期間ではあったけれど添うことができたから。
そして、それを無上の幸せと理解し、無粋な欲をかかなかったから。
『線香護摩二』
なんというか、そういう映画(ビデオ)になっていそう。
お話しは、次のように締められる。
「日蓮上人も知ろし召せ。この尼僧こそ南無妙法蓮華経の当体なのである」
お色気大賞で、大沢悠里さんが羽目を外し過ぎた時の、内海桂子師匠のお説教を思い出した。
「ふざけんじゃないよ! 黙って聞いてりゃいい気になって。悠里、いい加減にしろよ! 何バカな事言ってるんだよ! 恥を知れ恥を! 水でもかぶって頭冷やしておいで!」(ウィキペディアより)
『甲蟹(かぶとがに)』
これは、ちょっと怪談がかっている。
魔性の女おとよは、人の会話の中で触れられるだけで、登場はしない。
得体が知れない。
久次が、おとよに精気を吸い取られて死んだ部屋を、久次の幼馴染の村雨が借りる。
そして、浮気相手の女性をそこに住まわせて、通う。
久次とおとよの年齢差は、20歳だった。
村雨と浮気相手の女性の年齢差も、20歳。
村雨は、自分は、この女にはまり込んでしまったと言う。
かつては、久次のおとよへの執着振りに呆れてしまっていたのに。
さらには、おとよという女に命を吸い取られた久次は幸せだったと考える。
もう一人の幼馴染直吉は、部屋を訪れて、牢獄のようだと思う。
そして、村雨の行く末に不安を覚える。
妖怪「肉吸い」は、精気ではなく、肉を吸った。
どっちを吸われても、骨と皮ばかりになり果てる。
河内には、布団太鼓という神輿を担ぐ祭りがある。
『河内風土記』を読んでいると、喧嘩がつきもののの、毎年血が流れる物騒な祭り。
でも、『野井戸一』の描写は、また違う感じ。
「それは、睡気を催すばかりの単調な節奏だ。笛も三味線も入らない。太鼓の音の合間に懸け声が入るだけで、まったく曲もない芸当だが ―― 締め込み一本の真裸にぎらぎらと汗を垂らしながら千鳥足で歩いていると、次第に陶酔していくものらしい」
Youtubeで見てみた。
本当だ。
この太鼓なら、私でも叩けそう。
でも、熱い掛け声と、この寝ぼけ太鼓の組み合わせはなんか気持ちいいぞ。
そして、お神輿がとてもとても重そう。
確かに、お神輿が千鳥足に進んで見える時もある。
三社祭は、女性の担ぎ手もいるけれど、これは無理そう。
それにしても、なんで、お神輿に布団を積んだんだろうか。
河内は、昔は綿栽培が盛んだったそう。
それで、綿を詰めた布団を神様に見立てたのかな。