『葬送の庭』

『葬送の庭』
タナ・フレンチ
安藤由紀子 訳
集英社文庫

父親は、誰がやったのか分かったのだろう。
だから、フランクに、今すぐに家を出て二度と来るなと言った。
母親を、これ以上悲しませないため。

でも本心は、自分の介護をする人がいなくなるからであるような。

13歳のフランクに、父親は言う。
男というものは、自分は何のために死ぬのかが分かっていなければならないと。

13歳のフランクは、すでに、自分の父親がどうしようもない男であることに気づいていたのではないだろうか。
口だけの男だと、心の中で馬鹿にしていたかもしれない。
でも、父親のその言葉だけは、40歳を過ぎても心に残っていた。

22年ぶりに再会した兄弟姉妹達に、フランクは「なんのためになら死ねるか」と尋ねる。
シェイは、なんと、「家族」と答える。

父親が働いていたら、お酒に溺れなければ、事件は起きなかった。

そう思うのだけれど、父親は責任を回避する。
「おまえたちはもう大人だ。万が一、自分の人生を台なしにしたところで自己責任だ。おれの責任じゃない」

シャルロッテ・リンクの『失踪者』のエレインや、この『葬送の庭』のシェイは、どうしたらよかったんだろう。