『ルポ路上生活』

『ルポ路上生活』
國友公司
KADOKAWA 2021年

山谷の炊き出しに参加した時のことを、思い出した。

特に一人の青年のこと。

ボランティアだと思っていたら、路上生活をしているのだった。

そうと知って、とても驚いた。
見た目は、確実に、誰からも違和感を覚えられることなく、バスや電車で移動できる。
話した感じは、少し内気な優しい青年。
何より、若い。
「なんで????」と思った。

この本の中に、上野で路上生活を始めた青年を、周りのおじさん達が面倒を見て、実家の奈良に帰らせたという件がある。

この青年が、何故、家を出たのか分からない。
今は手配師に付いて行って働くことは無理だという、その理由も分からない。
ちゃんと奈良に帰るかどうか分からない。
奈良に帰って頑張れるかどうかも分からない。

でも、周りのおじさん達は、彼に可能性を感じて、普通の生活(自立した生活?)をしていって欲しいと思ったのかな。

自分が出会った青年は、九州か(広い)、山口の出身だった。
過去、テコンドーをやっていた。
ココに来た理由は知らない。
朝(仕事斡旋の時間帯)のセンターは、とても怖いと言っていた。
周りの人(おじさん)達は、よくしてくれると言っていた。

青年は、堅川の河川敷をねぐらとしていた。
当時、堅川の河川敷では、大規模な強制撤去が行われようとしていたような。


高校生だった自分に、「これでコーヒーでも飲みなさい」と500円札を差し出したおじさんの手の指は何本か欠けていた。

おじさんが降りた駅は、南千住。

自分は、電車のドアが閉まる時に、500円札をホームに投げ捨てた。

ずっと気になっていて、山谷に生きる人達と話してみたいと思っていた。
話しはできたけれど、あのおじさんの人生は分からない。

どんな人生だったのだろう。