『小説河内風土記 巻之三』

『小説河内風土記 巻之三』 今東光 巻之三は、色欲回。 『おんば』 流行り病で両親を亡くした、20歳と17歳の姉妹の話し。 二人は、結婚することなく、妊娠→出産→乳母を幾度か繰り返す。 子供たちは、一人を残して養子に出す。 不幸な話しなのだけれど…。 物…

『印(サイン)』

『印(サイン)』 アーナンデュル・インドリダソン 訳 柳沢由美子 東京創元社 終盤、分からなくなってしまった。 マリアは、本当は、母親を見なかったのか? マリアの、「あれは事故だった」という言葉で、一気に分からなくなった。 バルドヴィンの、「あれ…

『小説河内風土記 巻之二』

『小説河内風土記 巻之二』 今東光 東邦出版社 昭和52年 巻之二は、全話、夫婦、家庭のお話し。 『覗きからくり』。 作次は、自分が働く飯場のお金を横領して、人妻に貢ぎ、駆け落ちした。 そして、夫婦で覗きからくり屋になった。 もう、覗きからくりを楽し…

『小説河内風土記 巻之一』

『小説河内風土記 巻之一』 今東光 昭和52年 東邦出版社 面白い。 今東光は、昭和26年から昭和50年まで、八尾市の天台院で住職をしていた。 その時に触れた、河内の人情風俗を短編小説集に仕上げたもの。 野卑で、泥臭くて、無遠慮で、エロで、ケチ。 そして…

『悪名』

『悪名』 今東光 1960年 「週刊朝日」連載 朝吉、17歳~20歳の設定。 途中から、こんな渋い10代いないでしょうと思った。 でも、17歳の朝吉は、リアルだった。 AZUMI説法の、朝吉に徴兵令状届くのくだりは、きっと映画バージョン。 小説では、貞も朝吉も、「…

「ジョン・リーバス警部シリーズ & マルコム・フォックス警部シリーズ」

「ジョン・リーバス警部シリーズ & マルコム・フォックス警部シリーズ」 イアン・ランキン 延原泰子訳 早川書房 定年退職したリーバスだけれど、一作目『他人の墓の中に立ち』では、民間人として、コールドケースに関わる。 二作目『寝た犬を起こすな』では…

「警部補マルコム・フォックス シリーズ」

「警部補マルコム・フォックス シリーズ」 イアン・ランキン 訳:熊谷千寿 新潮文庫 だが、だめだ。やはり、考えられない。自分の暮らしに慣れ過ぎて、今の暮らしが気に入っている。うまくいかない……。 このセリフ、リーバスが言ってもよさそう。 フォックス…

「ジョン・リーバス警部シリーズ」2

「ジョン・リーバス警部シリーズ」2 リーバスは、1作目の『紐と十字架』での仕事が認められて、2作目の『影と陰』で刑事部長から警部に昇進した。 1作目のリーバスは、41歳。 『影と陰』のあと、3作目から6作目は翻訳されていない。 7作目の『血の流れるま…

「ジョン・リーバス警部シリーズ」1

「ジョン・リーバス警部シリーズ」1 イアン・ランキン 早川書房 『紐と十字架』 リーバス、41歳。刑事部長。 リーバスは、高校卒業後、軍隊に入った。 S.A.S(イギリス陸軍特殊空挺部隊)で、心を病んで除隊し、警官になった。 対テロリストの新チームに入る…

『レイン・ドッグス』

『レイン・ドッグス』 エイドリアン・マッキンティ 武藤 陽生 訳 早川文庫 ダフィ、おめでとう! これは、チャンスだよ。 納屋の中にあるアレは断捨離するのだ。 前作で、ケイトも心配していたよ。 でも、ダフィの孤独タイムが好きだったので、ちょっと寂し…

『ロンドン・ブールヴァード』

『ロンドン・ブールヴァード』 ケン・ブルーエン(今回から、ウがエに変わった) 鈴木 恵 訳 新潮文庫 この作品は、映画化されている。 観たことはないけれど、どうやら、カッコイイ話しになっているよう。 原作は、悪趣味で、グロテスク。 ロンドンが舞台で、…

『アメリカン・スキン』

『アメリカン・スキン』 ケン・ブルーウン 鈴木恵 訳 早川文庫 アイルランドのゴールウェイで銀行強盗を犯したスティーブが、アメリカに高飛びして、アメリカ人になりきろうとする話し。 描かれるアイルランド人たちが、とても沁みる。 アイルランドには、何…

『ミレニアム1~3』

『ミレニアム1~3』 スティーグ・ラーソン ヘレンハメル美穂・岩澤雅利 訳 ハヤカワミステリ文庫 とても評判の良い作品なのだけれど、付いていくのが大変だった。 でも、遺されていたシリーズ4の草稿は読んでみたい。 「1~3」は、スティーグ・ラーソンが、…

「ヨーナ・リンナ警部 シリーズ」

「ヨーナ・リンナ警部 シリーズ」 ラーシュ・ケプレル どこかに、「殺人者は、対象者を、自分の物語に取り込む」みたいなことが書いてあった。 作者は、登場人物を自由に動かして、物語を完成させる。 殺人者の物語のテーマは、自分の欲望の充足。 6作目ま…

「私立探偵ジャック・テイラー シリーズ」

「私立探偵ジャック・テイラー シリーズ」 ケン・ブルーウン ハヤカワミステリ文庫 東野さやか 訳 舞台は、アイルランドのゴールウエイ。 2作目『酔いどれ故郷に帰る』の依頼主は、「ティンカー」。 注には、(アイルランドの漂泊民のこと。いわゆるジプシ…

「エーランド島四部作」

「エーランド島四部作」 ヨハン・テオリン ハヤカワミステリ文庫とハヤカワポケットミステリー 三角和代 訳 『黄昏に眠る秋』 幼い息子が行方不明になって以降荒れていたユリアが、変わっていく。 つかのまユリアは、無駄にしてきた歳月をずしりと胸にのしか…

『許されざる者』

『許されざる者』 レイフ・GW・ペーション 創元推理文庫 久山葉子 訳 第一部のエピグラフ。 「目には目を……」 第二部のエピグラフ。 「目には目を、歯には歯を……」 第三部のエピグラフ。 「目には目を、歯には歯を、手には手を……」 第四部のエピグラフ。 「…

「チビでデブで無能な警察官ベックストレーム・シリーズ」

「チビでデブで無能な警察官ベックストレーム・シリーズ」 レイフ・GW・ペーション 創元推理文庫 久山葉子 訳 『見習い警官殺し』。 犯人が分かった後、一人の女性が自殺する。 一通の封書を受け取ったことが引き金になって。 自殺だけれど、殺人でもあるよ…

「マリア・カッリオ巡査部長~警部 シリーズ」

「マリア・カッリオ巡査部長~警部 シリーズ」 レーナ・レヘトライネン 古市真由美 訳 創元推理文庫 マリアと、同僚のペルッティ・ストレムは、警察学校で同級生だった。 ペルッティの推薦で、同じ署で働くようになった。 けれど、人生は、真逆を行く。 ペル…

「フルダ・ヘルマンスドッティル警部 シリーズ」

「フルダ・ヘルマンスドッティル警部 シリーズ」 ラグナル・ヨナソン 吉田薫 訳 小学館文庫 「アリ=ソウル シリーズ」の時系列な最後は、前向きな告白だった。 愛する人に、自分をさらけ出せない理由となっている出来事を伝えよう、という決心。 「フルダ シ…

「警察官アリ=ソウル シリーズ」

「警察官アリ=ソウル シリーズ」 ラグナル・ヨナソン 吉田薫 訳 小学館文庫 簡潔。 ジャン・コクトーの、一筆書きみたいなデッサンを思い出した。 あんな風な、描写。 陰影は無いけれど、無駄なく的確。 登場人物たちが隠した闇が、生々しい。 アリ=ソウルの…

「テオドル・シャッキ検察官 シリーズ」

「テオドル・シャッキ検察官 シリーズ」 ジグムント・ミウォシェフスキ 訳 田口俊樹 小学館文庫 『もつれ』 「ファミリー・コンステレーション・セラピー」のシーンが、不気味。 Constellationは、「星座」のこと。 家族を、星座に見立てている。 グループ・…

「コニー・ショーベリ警視 三部作」

「コニー・ショーベリ警視 三部作」 カーリン・イェルハルドセン 訳 木村由利子 創元推理文庫 ショーベリの奥様が、夫に、心理テスト(?)をするところがあった。 「川を渡る女」。 奥様は、登場人物を、「道徳的に悪い」順に並べるように言ったと記憶して…

「オスロ警察殺人捜査課特別班 シリーズ」

「オスロ警察殺人捜査課特別班 シリーズ」 サムエル・ビョクル 訳・中谷友起子 Discover文庫 『アイム・トラベリング・アローン』。 ルーカスが悪魔を見るシーンから、その後のことが好き。 ミアの苦悩の描写が、ちょっとくどい。 『アイム・トラベリング・…

「マルティン・ベック 10部作」

「マルティン・ベック 10部作」 マイ・シューヴァル ペール・ヴァールー 訳 高見浩 角川文庫 『悲しみのイレーヌ』で、『ロゼアンナ』という名前の語感が気になった。 現在、柳沢由美子さんの訳は、5作目まで進んでいる。 どうが、止まってしまいませんよう…

「カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ」

「カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ」 ピエール・ルメートル著 橘明美訳 文春文庫 間違って、二作目の『その女アレックス』を最初に読んだ。 アレックスが監禁されるところから始まる。 その監禁が怖すぎて、読むのを止めようかと思った。 でも読み進め…

「ジミー・ペレス警部もの」

「シェトランド四重奏」と「ジミー・ペレス警部シリーズ」 アン・クリーヴス 創元推理文庫 殺人犯が明らかになった後のことが、気になった。 殺人犯の「身近な人」の、その後が。 「身近な人」のその後について、『白夜に惑う夏』と『野兎を悼む春』と『青雷…

「レオ・デミノフ 三部作」

「レオ・デミノフ 三部作」 T・R・スミス 新潮文庫 一作目のレオ・デミノフは、スターリン体制下のソ連の、国家保安省の捜査官。 二作目、三作目と、職業は変わっていく。 登場シーンのレオが、最後のシーンのレオになるまでの、約30年間の物語。 レオが経験…

『ガン・ストリート・ガール』

『ガン・ストリート・ガール』 エイドリアン・マッキンティ 訳・武藤陽生 早川文庫 今回の一曲は、43~44ページに出てきた、サム・クックのライブ盤より。 「It's all right / For sentimental reasons」のメドレー。 youtu.be ダフィにとってサム・クックは…

『アイル・ビー・ゴーン』

『アイル・ビー・ゴーン』 エイドリアン・マッキンティ 訳・武藤陽生 早川文庫 ダフィは、北アイルランドの問題解決の一助となるために、警察に入った。 仕事は出来る。行動力がある。コミュニケーション能力も高い。根気強い。運もある。 ただ、警察という…